女王様のため息
私の言葉は、司の言葉を全て消した。
呟いた言葉の重みは半端なものでもなく、司には全力で否定するだけの根拠もないようで、黙り込んだまま切ない時が続いた。
きっと、ほんの数秒、数十秒くらいの短い時間に、私と司はお互いが抱える不安の大きさを思い知った。
私は美香さんと司のこれからの関係に。
司はきっと、私と海とのこれからの付き合い方に。
今、この場では簡単に解決できない不安を知ったはずだ。
お互いに思いを寄せ合っていても、お互いだけを考えて、生きていけるわけではないと、わかってはいても。
どうにもやっかいな感情を二人とも抱えていると、気づく。
それでも、目の前にいる司への想いを捨て切れる自信もないとわかる私には、どうしていいのかわからなかった。
そっと俯いて、目の奥が熱くなるのを堪えていると、コンコンとノック音がして
しばらく後にそっとドアが開いた。
「5分経過。そろそろ仕事に戻りなさい。今すぐにはどうしようもできないでしょ」
貴和子がゆっくりと顔をのぞかせて、私と司を交互に見た。
「真珠はちゃんとメイクを直してから席に戻りなよ。司もコーヒーでも飲んで、気持ちを浮上させてから、ね」
肩を竦めた貴和子に助けられたかのように私は小さく笑うと。
「とりあえず、仕事仕事」
無理にでも、明るい声を出した。
貴和子が言うように、今すぐにはどうしようもできない。
すると。
「真珠を手放すつもりはないから」
ぐっと低い、司の声が聞こえて、体中が、震えた。