女王様のため息
うなだれて、思わず目の前の机に両手をついてため息を吐いた。
「すみません。一応、部長と専務なのに、生意気な事を言いました」
「一応?」
「あ、一応……じゃなく、確かに部長と専務です、ご立派な二人に生意気な事を言ってしまい、はい、すみません」
深く頭を下げるけど、相変わらず激しく跳ねている鼓動を抑えることもできず、ただただ後悔の嵐だ。
なるべく個人的な感情を仕事に持ち込みたくなくて、会社では淡々と話すように心がけているのに、そんな心がけすら守られた事がない。
入社して以来何度も味わう後悔が、私を包み込んでいく。
本来の私は、決して女王様でもない。
気を緩めると、自分の考えをポンポンと言ってしまう落ち着きのない単なる下働きの女なんだ。
どっしりと構えていて、頼られる女王様の姿は、虚構の姿。
「真珠さん、いいよいいよ。この会社の将来をそこまで気にかけてくれてありがとう。
でもね、所詮僕らも会社の歯車だから、僕たちの仕事云々で会社が左右される事なんてないんだよね。
極端な話、社長がいなくても、会社は動くし。
だから気にせず取締役目指してくれ」
くすくす笑う二人からは、明るい視線と声。
私の言葉に気を悪くした様子もなくて、落ち込んだ気持ちが少しだけ浮上した。
「でね、たまに感情そのままに言葉を放ってしまう真珠さん。
7月の組織変更で研修部に異動してみないか?って一応聞いてるんだけど、これって、ほぼ決定事項だから」