女王様のため息

 *   *   *


いつも行く居酒屋のカウンターに二人で並ぶと、司から伝わってくる緊張感が私の気持ちをぎゅっと固くする。

まるで、今日が二人の将来を決定づける重要な日のように、司の表情は強張っているように見える。

これから交わそうとしているどうしても避けて通れない気持ちのやり取りは、二人が築いてきた友情よりも濃い関係へと、二人をどう導いていくのかはわからないけれど、お互いがお互いを大切に思っていると伝えあった今。

二人が一緒にいられる幸せを求めて、探って。

私にしてみれば、結局は司と美香さんとの関係だけが大きく影響していて、他の事は大した事ではないように思えるけれど。

司が大切にしていた美香さんとの付き合いが、これからどうなっていくのか、ただそれだけが気になるんだけど。

司にしてみれば、私と海との関係が気になって仕方がないのかもしれない。

私と海には、恋人として過ごして過去も、これからそうなるという未来もないから安心して欲しいけれど、それは私がわかっているだけで、司にとって、海の存在は脅威なのかもしれない。

私が美香さんに対して持つ、不安な感情と一緒に違いなくて。

「で、俺は、どうしても真珠には、俺の人生の中で笑っていて欲しいんだ。
他の男が築いた人生に導かれて笑ってる真珠なんて我慢できない」

「え?」

突然、何の予兆もなく言葉を落とした司を見ると、強張った表情はそのままだけれど、何かを秘めた瞳の力も見えた。

何をきっかけに、司がそう願ったのかはわからないけれど、司の口調も視線も、もうそれは決定事項だと訴えているように見えるし、だから、逃がさないし、撤回しない、そう私に伝えていると感じた。

体の奥から、震えた。

芯から粟立った。






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