女王様のため息
「そう。土下座もするし、殴られても構わない。とにかく真珠が俺のもんになればそれでいい。もう、これ以上の我慢は無理だ。今までの何年かを取り戻して、真珠と笑って過ごせる時間が手に入るのなら、何でも、する。
あ、犯罪以外なら」

「……」

体中が浮いてしまうような現実離れした言葉に、さっきとは違う意味で黙り込んでしまった。

目の前の飄々とした男は、一体どうして、こうも熱く甘く、私を泣かせるような言葉を次々と……。

「おい、なんか言えよ。結局、真珠は海くんと何かあるのか?」

急かすような声に、目の奥がぐっと熱くなる。

鼓動もとくとくとくとく、激しく速く大きな音を響かせて、私の聴覚で感じ取れる全てに訴えてくる。

ぐんと上昇していく体温を実感しながら、どうにか司を見つめているうちに、その視界もぼやけてきた。

「……海は、高校生の時に恋人になりきれなかった大切な男。ただそれだけの、つかず離れずの仲なの。親戚だから、一生付き合っていくけど、それだけ。
で、司は、私の人生で最後の恋人になればいいと思ってる大切な男。
……わかった?」

後半の声は涙ぐんでしまって、自分でもうまく聞き取れなかった。

俯いて、膝の上に置いた手を見つめながら、どうにか口にできた気持ちを司にちゃんと伝えられただろうか、と不安になる、

長い間、心の奥に閉じ込めていた本心を口にできる時が来るとも思っていなかったせいか、なんだかまとまりもないし、たどたどしくて。

悔しい。
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