女王様のため息
その夜、司は私を抱いてくれた。
普段、司と触れ合う事を意識し過ぎていた私には、何の遠慮もせず抱き合える事が嬉しくて涙が止まらなかった。
司は、決して私のものにはならないと諦めていた長くて苦しい時間を払拭してくれるように優しくゆっくりと思いを注いでくれた。
私の体中を探るようになぞる指先に震えて、何度も交わした口づけに声を奪われて。
『初めてじゃないってのが、むかつく』
低い声が私を責めた。
『司だって、そうでしょ……むかつく』
私の上で切ない顔を見せる司の頬に手を寄せて、泣き声で答えると。
『お互い、回り道したけど、もう他の男にはこんなやらしい顔見せんなよ』
司も泣き声になっていた。
感情が昂ぶって溢れて、逆に静かにお互いを探ると。
今まで見た事がないお互いが現れるのが嬉しくて、何度も抱き合って何度も体温を溶け合わせた。
初めて司に抱かれて、抱きしめて、これから何度も受け止めるに違いない歓びの重みに一晩中浸っていた。
好きでたまらない恋人に抱かれる痛みは、極上だった。