女王様のため息
恥ずかしさと照れくささのあふれる気持ちをおしやって、どうにか気持ちを整えながら小さく息を吐いた。

部長からその顔と言われても、きっと今の私の顔からは表情が消えていて、何も読めないと思うんだけどな、とふと思う。

強いて言えば、ただ驚いてるだけで。

「えっと……恋人っていうか、その、まあ、恋人……ですけど。まだ、その」

昨日、気持ちを繋いだばかりだとは、言いづらい。

今朝まで一緒にいた事も、もちろん言えるわけないし。

それでも、異動が本決まりになる確率が高いと聞かされたんだから、そんな大切な事を司に黙ってるわけにはいかない。

ちゃんと話して、これからの二人の事を相談しないと。

「女性でも異動が多い会社で働いてるんだから、彼だってわかってくれるだろう」

他人事だと思って、そんな軽々しく言って欲しくないのに、のんびりと呟く部長の言葉に、少しむっとした。

私のそんな気持ちが顔に出たのか、部長は小さく笑って。

「お前たちよりも会社生活は長いんだ、それだけでわかる事も多い。
多分、彼も納得するさ、渋々でもな」

「そんな、簡単に言わないでくださいよ」

思わず反論した私にも、部長は『ま、大丈夫だ』と独り言のように言って、自信ありげに頷いた。

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