女王様のため息


ぽすん、と体ごと抱え込むように私を包んだ司は、頭を私の肩に置いて、ふうっと小さく息を吐いた。

「ようやく手に入れた女王様を、仕事ごときに邪魔されて手放すわけないだろ。
会いたい時にすぐ会える距離にいなきゃ、この女王様は崩れてしまうからな」

何度か私の背中を撫でながら、迷うことなくはっきりと言う司。

仕事ごときって言ってるけど、その仕事を一生懸命、誇りを持ってこなしている司の事、良く知ってるから、何だか違和感だらけだ。

「無理……しなくていいのに。司が仕事を大切にしてるの、よくわかってるもん」

「まあな、設計の仕事が好きで、今の会社選んだしな。大切だな」

「ほら……私のところについてくるなんて無理だよ。大切な仕事は司にとっては生きる糧なんだから。それに、無職になられても、私困る」


側にいてくれるって言ってくれたのは嬉しいけれど、大切な仕事を捨ててまで私を引き受けるなんて、何だか違う気がする。

「無職になんかならないけど?俺、真珠と一緒に暮らして、本社に通おうかなと思ってるんだけど」

私の思いつめた声に、おかしそうに笑い声をあげて、司は言った。





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