女王様のため息

「まあ、通勤は大変だろうけど、なんとかなるだろ。
仕事でどうしても帰れない時には実家にでも泊まればいいし。
多少本社よりの場所に家を借りて、真珠にも通勤を頑張ってもらうかもしれないけどな」

「新幹線で二時間はかかる場所だよ。そこから本社に通うなんて、毎日は大変ってわかってる?」

「わかってるよ。朝早く家を出て、夜遅く帰る毎日が延々続くんだろうな。
あ、新幹線代って、会社から支給されるのか?総務部なら、知ってるだろ?」

「……特急料金は出ない。普通料金なら出るけど」

「あー、やっぱりそうか。かなりの出費だな。
ってことは飲みに行く回数を減らさないといけないな……あ、でも通勤が大変になれば、誘われることも減るだろうし、大丈夫だな」

「……」

私の耳元でぶつぶつと呟きながら考えを巡らせている司に、どう答えていいのかわからないんですけど。

毎日新幹線で本社まで通うと、本気で考えてるんだろうか?

私も仕事を続けるし、経済面ではどうにかできても、体力が続くかどうかも不安だし、司にとって大きな負担を強いる事になる。

そんな事、私が簡単に頷いていいのかわからない。

私の異動に司を巻き込んで、司の仕事に影響を与える事も必至だし、いずれ息切れすると予想できて怖くなる。

そんな私の思いに気付いているのか気付いていないのか、司は簡単に笑顔を見せると。

「で、いつ結婚しようか?」

まるでその言葉を言う事に、何の戸惑いも不安も抱えていないような声。

司は私に、あっさりとプロポーズをした。

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