女王様のため息
私の異動に関わらず、人事に関する事は直前にしか辞令は出ないけれど、この件に関しては本決まりだと、研修部から知らされた。
株主総会が終了して、7月に予定されている大規模な組織変更の中に私も放り込まれるという、まさしく司の読み通り。
わが社の中枢部である設計部で働いていると、社内のいろいろな風向きが分かって、勘も働くらしい。
とはいっても、きっと設計部のボス、相模さんから聞いてる事も多いんだろうと思う。
わが社に入社してくる建築学部卒業の社員の多くの志望動機は、相模さんという世間によく知られている建築士に憧れて、が多い。
司なんてその典型で、相模さんに憧れて同じ大学に入学し、同じ会社に入社したというサラブレッドだ。
『どうすれば、相模さんのもとで仕事できますか?』
私たちの入社式の後、人事部長に直接尋ねた事は、社内でも有名で、未だに宴会での笑いのネタにされている。
けれど、当時の司は真剣も真剣。
相模さんのもとで働いて、建築の勉強をしたいと、それだけの為にこの会社に入ったんだと、押して押して。
結局、相模さんのいるグループに配属された。
なんて強運の持ち主。