女王様のため息
『設計部門以外の部署が存在している事を頭ではわかっていましたが、自分には無関係だと思って軽く考えていました。
けれど、会社の本体であり、なくてはならない部署だとわかって目が覚めました』
『資本金なんて、意識したことはありませんでした。大株主が誰かも知りませんでした』
……確かに、普段から意識しないよね。
『講義してくださった方のしっかりとした口調や自信に満ちた表情を見習おうと思いました。女王様と呼ばれていると聞いて、納得しました』
は?誰が新入社員にそんな事を教えたんだろう。
女王様なんて言われても心底嬉しいわけないのに。
心で小さく舌うち。
自分の進退や司との未来に右往左往している私が女王様なんて呼ばれている事に大きな違和感も感じる。
ページをめくろうとした時、聞き覚えのある名前が目に入った。
『都築柊吾』
「つづき……。あ、檀上で説明してくれた子だな」
資本金の事について正確に説明してくれた新入社員。
何故か私に興味深げな視線を向けていた彼の事は強く印象に残っていて、どんな感想を書いているのかと気になった。
司の知り合いみたいだったけれど、それを聞くどころではなかったこの数日、すっかり忘れていた。
今日にでも司に聞いてみようかな。
都築君の感想に視線を落とすと、数行にわたって彼の言葉が並んでいた。
『大学時代から入社したかった会社に入社できて、期待でいっぱいの研修です。設計の仕事はもちろん、会社そのものにも興味があったので経営状況など読み漁っていた事が役に立って良かったです。
大学の先輩から、事前に女王様からは会社の状況に対する質問が必ずあると教えられていたので予習していましたが、まさにヤマが当たりました。
女王様にも今後色々と教わりながら、設計以外にも視野を広げて、この会社に貢献していきたいです』
え?
また、女王様だ。誰がわざわざそんな事を新入社員に教えているんだ。