女王様のため息
私とこの部屋で暮らしたいと、あからさまな態度を見せる司。
司にこの部屋を案内してくれたのは、司の大学時代の先輩である春岡さん。
私の異動に伴う引っ越しだから、私が人事部に相談して物件を探す方法もあったし、それが社内では一番オーソドックスな方法だけど。
私の異動をきっかけに一緒に暮らすと決めている司は、やたら張り切ってリサーチしていたらしい。
不動産会社の営業をしている春岡さんにすぐ連絡をとって、いくつかの候補を挙げてもらったのが昨日で、そして早速私を現地に連れてきた。
今まで司が側にいて見守っていた美香さんとの関係がクリアにされて、自由になった事も手伝って、司の私への思いは気持ちを伝えるというレベルだけではとどまらず、二人の生活全般の見直しを突きつけてくるようだ。
だからといって、海と私の付き合いに嫉妬してきたり、通勤にかなりの努力を強いられそうな引っ越しをも受け入れようとしたりするのは、お互いの為にはどうなのかと。
たとえ、二人の努力があったとしても、長続きしないんじゃないかと不安になるけれど、私のそんな気持ちにはお構いなしに周囲を固めていく司。
おまけに、物件めぐりには美香さんまでが登場して。
今朝、紹介された時には、目が点になって何も言葉が出なかった。
呆然自失っていうのは、こういう事かと、冷静に思ったり。
『春岡さんとつきあってるんだ』
そう教えてくれた時には更に体は固くなって瞬きすらできなかった。
嬉しそうに笑いながら美香さんと春岡さんを見ている司に、何も答えられなかった。
だって、だって、だ。
突然の事に、理解不能。