女王様のため息
何度『ばか』と言っただろうかとも思うけれど、いいや、どれだけ心配をしたかを考えればそれくらい。

暁も伊織も、背負わなくてもいい苦しみを背負って、二人で幸せになれるはずだったのに、それを手放したバカヤローな二人だ。

『……真珠?』

ぐすぐすやっていると、懐かしいもう一つの声が聞こえた。

「え?暁?」

『ああ、相変わらず泣き虫だな。伊織といい勝負』

軽い声は高校時代のままで、何年も会わなかった事が嘘のように聞こえた。

「暁、いつ?いつ帰ってきたのよ」

『んー。去年。で、伊織に偶然再会したのも、去年。また、遊びに来いよメアド変わってないなら連絡するぞ』

「うん、会いたい、伊織にも暁にも、メアド変わってないからいつでも連絡して。って伊織にも言っておいてよ。……で、暁、ヴァイオリニストになれたんだね」

『ああ。まだ可もなく不可もなくこれからだけどな。
CDを出したから、今度やるよ』

あっさりと言った暁に驚いて、私は思わず大きな声を出してしまった。

「CD?え?デビューしたの?すごいじゃない。おめでとう。これからすぐにお店に行って買うから。ちゃんと聴くからね。……やだ、また涙が……」

止まることなく流れる涙を、司から手渡されたハンカチで拭いながらひくひくとしていると。

『真珠?今度は、俺たち大丈夫だから。安心していいぞ。何があってももう伊織を手放す事はないから、だから、泣くな』

優しい暁の声にさらに安心した私は、車内の三人の存在を気にする事なく号泣してしまった。
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