女王様のため息
「切り札って一体なんだよ。俺の写真がそれほど効果をあげるとは思えないんだけど。それに、自分の知らないところで俺の写真が出回るなんて気分悪い」
「じゃ、誰に写真を配布したかを、ちゃんと連絡する」
そう言って笑った途端、大きなため息と呆れた声。
「そんなの意味ないってわかってるだろ?」
「……ん。まあ、それなりに。でもね、司って社内でも人気あるからこの写真はレアなんだよ。だから私の業務をスムーズに進められるように協力してよね。
お願い」
私が真面目にそう言ってお願いする様子を見ながらどんどん険しい表情になる司。きっと、すぐにでも怒鳴りたい気持ちを抑えてるんだろう……。
社内に関わらず女の子に人気がある司だから、本人が特に意識していない女の子から追いかけられたりする事が何度かあって、その度に大変な想いをして振り切ってきたから、私のお願いを異常に嫌がるのもわかる。
だから、やっぱり写真を切り札にするなんてやめた方がいいんだろうけど。
消去するのは嫌だ。
……レアだと言った私の言葉。嘘じゃない。私にとってもレアな写真だから。
保存して、保護しておきたい。
俯きながら、まだたくさん残っているラーメンに視線を落としていると。
「俺よりも、海くんの方がいいんじゃないのか?俺なんかより断然格好いいし女の子が喜びそうな王子様系?そんな感じだろ?」
司がぽつりと言った。