女王様のため息


そう。

何度も私と海はその事を口にして、納得している。

面倒な未来を解決してまで寄り添うほどにお互いが好きじゃなかったってこと。

それだけ。

「だから、兄さんが今更その事を言ってもどうしようもないんだけどな。
私には、もっと大切な縁があるし」

大切な縁を結びたい相手は今も、横顔に緊張感を浮かべながら、父さんの相手をしている。

こうして、私のために『面倒な事』を頑張ってくれる。

私の勤務地が変わる事なんて大したことないと笑い飛ばすほどに、私の事を大切にしてくれる。

きっと、司には簡単なものではないことばかりだけど、それでも受け止めてくれるし未来の為に努力してくれる。

そんな司を見ながら大変だろうなあとか、父さんの相手してくれて、ごめんね。
とか。

思うけれど、やっぱり私も司の事が好きだから、『結婚、やめていいよ』なんて言わない。

二人がどれだけの重荷を背負おうとも、司との未来は諦められないから。

司を手放したくないから。

「母さん。私、幸せになるよ、絶対」

大きく笑って、そう伝えた。

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