女王様のため息
そんな私の表情を見て、何故か司は顔を歪めた。

「ふーん。本当、仲いいな。俺にはそこまで仲がいい親戚なんていないけどな」

「うん……ここまで仲がいいのは海だけかな。親戚みんなで集まった時も海がいるから面倒な事も楽しめるっていうか」

どこか鋭い印象を他人に与える海の顔が浮かぶ。

最初会った時には桜の下でぼんやりしている彼の姿が異様にその場に不似合で、ぷっと笑ったっけ。

何年も前の春の事だ。

それ以来ずっと、海と私は近い距離にいる。

「海くんだって真珠といるのが楽しそうだな。さっきも今から迎えにくるってうるさかっただろ。俺が送るって言ってしつこかった」

呆れたような司の声。

「あはは、ごめんね。海、過保護だから」

「過保護ねえ……」

何かを考えてる司の表情からはその真意は読めないけれど、それ以上司を見ないように意識した。

できればずっと司を見ていたいなと思うけれど、そうすると、嘘が苦手な私の気持ちを悟られそうで不安になる。

頭のいい司の事だから、それは簡単なことだろう。

だから、さりげなくさりげなく、司から目をそらした。

司を見つめていいのは、司の彼女だけだから。
< 21 / 354 >

この作品をシェア

pagetop