女王様のため息
綺麗な形の口元が艶っぽく光って、切れ長の整った二重が私を見て揺れる事もない。
「つ、司……?」
普段真面目な顔をなかなか見せない司の今の様子に、どう応えていいのかわからない。
車内に響く私の鼓動の音がどんどん速くなってる気がするけど、実際は司には聞こえてないんだろうな……とか司の瞬きの数を数えたり、今この場の雰囲気から気持ちをそらすあれこれを思い浮かべても。
「真珠、いいか?」
甘い声が私に落とされると、それだけで何もかもが飛んでいって、正しい事とそうでない事の違いが曖昧になってしまう。
「もう、無理だ」
口元に吐息を感じた後、すぐに染み渡るのは司の唇の熱さ。
啄むようなキスが何度か繰り返される。そんな軽いキスの間、どこか試すような視線が私に向けられる。
目を閉じる事ができないまま、そんな視線を受け止めて、『いいんだな?』っていう気持ちを理解した。
今ならこれだけで、何も変えないで済む。
そんな暗黙の言葉が司の唇から伝わってくるけれど、それに対してどう答えろというんだろう。