女王様のため息
「応援合戦は、私達のクラスは見事優勝したの。
みんなで抱き合って大泣きしたし、卒業なんてしたくなかった。
おまけに、この日の朝に暁の海外留学が正式に決まったから、さらに寂しくなってどうしようもなかった。
でも恋人の伊織は泣かずに笑っていて……何年も恋人と離れ離れになるのに、笑ってたの。
だけどね、この写真を撮って3か月後に、二人は別れて伊織はいなくなった」
伊織が卒業を待たずにいなくなった。
伊織のご両親と学校との間でどんな話し合いがあったのかわわからなかったけれど、結局卒業まで一度も伊織が学校に顔を出す事はなかった。
けれど、卒業式の日、ちゃんと伊織の卒業証書はあって、悲しげにその名前を指先でなぞる暁の表情をずっと忘れられなかった。
恋人だった暁ですら伊織の居場所を教えてもらえない現実は、二人を知るみんなの心に暗い影を落としたけれど、いつか、伊織と会える日を信じて私達は卒業をしてそれぞれの道で必死に生きてきた。
「披露宴には、この写真に写ってるみんなを招待しようと思っていて、その事を海から聞いたらしい暁のお願いを、私は叶えてあげたいの。
司にとっては初対面のメンバーばかりで申し訳ないんだけど。
お願い。っていうか、ごめん。もう暁には来てもらうつもりでいるから。
結婚式に関しては、あとは司の思うように決めてもらっていいから。
お願い」
かなりの人数になるに違いない高校時代の友達。
あっさりとした披露宴にしようとしていた私なのに、結局私のわがままで大げさなものになるかもしれないけれど。
座ったまま、司に頭を下げた。