女王様のため息
「悪い。彼女がいる男とキスするなんて、真珠には耐えられないよな。
本当、ごめん」

相変わらず右手で顔を隠した司の表情は見えなくて、その声から感じられる後悔によく似た声音からしか感情を読み取れない。

「真珠には、一大事だよな、申し訳ない」

その声が少し震えているのは、泣いているからなのかと視線を向けるけれど、それもよくわからない。

泣いているわけではなさそうだ。

「そんなに何度も謝られると、気まぐれのキスを肯定されてるみたいで気分が悪い。……ばか」

司が言うように、彼女がいる男と唇を重ねるなんて、私の中には選択肢としてないけれど、それを司に見抜かれている事の方が何だかつらい。

それをわかっているのに、私にキスを落とすなんて、普段の司からは考えられない。

私が嫌がる事や悲しむ事には細やかな気配りを向けてくれて、黙っていても私の感情を汲んでくれる司なのに。

シートから体をそっと起こして、司の体にそっと触れた。

その瞬間、びくとなった司の体につられて、私の中の緊張感も高まってしまう。

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