女王様のため息
司にとっての仕事は、もちろん生活基盤を支えるためのものだと思うけれど、自分のやりたい事を仕事にできて、おまけに収入も得られるという、とても幸せな人だと思う。
誰もが自分の望む職業に就けるわけでもないし、たとえ就けたとしても安定した生活が保証されるほどの結果を残せるとも限らない。
もちろん司がこれまでに努力していた成果が今を導き出しているとは思うし、これからも更に努力を重ねなければ、足元から現状は破壊されてしまう。
それがわかっているから司は日々努力し精進して。
毎日深夜までの残業もいとわず引き受けて、お客様の要望は全て実現しようと努力している。
相模さんの後継者と言われるには、それに足りる努力があっての事だと、私はもちろん周囲のみんなが認めているから、どれほどの人が司の成長を願っているか。
会社の発展のため、建築界の発展のため。
司の足元から伸びている道は、簡単なものではなく、それ相応の苦労が控えている。
そして、そんな未来を司自身が望んでいると、近くで見ている私が一番理解している。
だから、不安になるし、悩んでしまう。
二人で決めた未来の選択が、正しかったのかどうか、今でも揺れて仕方がない。
私が司の将来への足かせになってはいないかと、苦しい。
司が仕事を順調に続けていく事への障害として、私が存在するとすれば、やっぱり今結婚する事は諦めた方がいいのかと、考えずにはいられない。