女王様のため息


「あの、司は……一緒じゃないんでしょうか」

まさか相模さんと二人きりのランチなんだろうかと、どきどきする気持ちを抑えながら聞くと。

「司は、朝からメーカーとの打ち合わせに出てるからいないんだ。
その隙を狙って、真珠さんに声をかけたってわけ。
きっと、司が知ったら怒るんだろうな。
『俺の真珠』って最近口癖のように言ってるから」

「俺の真珠……」

「そう。よっぽど結婚が決まった事が嬉しいみたいだな。
今までになく仕事にも集中して、いい結果出してるし。
真珠さんの力は偉大だって設計部の噂だ」

「そんな……」

相模さんから聞かされる話に驚いて、どう言葉を返していいのかわからないまま呆然としていると。

そんな私にくすりと笑って。

「特に好き嫌いがなかったら、司とよく行く店に連れて行きたいんだけど」

相模さんは尚も私を誘ってくれた。

司の名前を出されると、断るわけにもいかないし、この間聞かされた司の仕事の話も気になるから。

私は大きく頷くと。

「よろしくお願いします」

「じゃ、一階のロビーで待ってるから、ここが片付いたら下りておいで」

相模さんは、総務部のメンバーからの視線を気にする事もなく、社内でも有名な余裕の微笑みを残し、その場を去った。

残された私は、みんなからの

『いいなあ、相模さんとランチ』
『写真撮ってきてよー』

口ぐちの攻撃にまみれながら、ただただ立ち尽くしていた。



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