女王様のため息
司の私への思いは、同期に対する友情に甘い優しさを加えたもの。
総務部に属する私は、社内全般の事に精通する必要があるせいか、顔も広く各部署の業務内容をほぼ網羅している。
総務部の管轄下である会社1階の受付業務にも就く事があるため社外の取引先とも顔見知りになる。
決して簡単な事ではなかったし、最初の1年は失敗ばかりで何度も泣いた。
建築一般を社業とするわが社の業務全般、理解するまでにはかなりの努力と涙が必要だったし、本来は精神的な弱さを軸としている私には過酷すぎる日々だった。
何度も『向いてないから辞める』とお酒に酔いながら愚痴をこぼし、何度、週末の朝を涙で迎えたことか。
その度に私の背中をそっと撫でながら
『辞めたきゃいつでも辞められるからとりあえず来週いっぱい踏ん張ってみろ』
司が優しくもない言葉をかけてくれた。
『会社辞めたら俺と会えなくなるぞ。それを耐えられるのか?』
くくっと笑うおまけもついて、ただでさえ気弱で心細くなっている私の心に司は入り込んできた。