女王様のため息
「ふーん、いつも冷静な真珠をこうも熱くさせる人の後継者だと言われてるなんて、司くんもできるオトコなんだな。見た目だけのオトコじゃないってことか」

「……まあ、ね」

そう答えながら、そのいいオトコと交わしたキスを思い出してしまって一瞬にして体がきゅんと強張ってしまった。

唇にさえ、司の体温が残っているような気がして落ち着かない。

普段なら途切れる事なく続くはずの会話もぎこちなくて、というよりも私の意識がなかなか海だけに向けられなくてどうしようもない。

海と話をしていても、気持ちはすぐに夕べの司の視線を思い出してしまう。

「へえ、とうとう、何か動きがあったって事だな?
夕べ、司くんとの関係に、何か変化があったのか?」

からかうような口調で、私の顔を覗き込んだ海は、俯いて口元をぎゅっと結んでいる私の顔を見てふっと笑った。

「わ、笑った?なによ、いきなり」

一瞬海に視線を向けたけれど、結局すぐに視線を逸らした。

そんな私の慌てた様子に、海は肩を揺らして小さく笑っている。

「本当。真珠は嘘がつけないね、高校の時から変わらなくてほっとするよ」

私の頭をぽんぽんと叩いても尚、おかしそうな声で私を見つめる海は、しばらく何かを考えていた。
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