女王様のため息

淡々と続く司の話は、私に無言を強いる力があって、膝の上に置かれた司の手に、そっと私の手を重ねて。

じっと司の横顔を見ながら、その口から語られる言葉に耳を傾けた。

「あいつは……彼女は、美香っていうんだけど。大学の同級生で、俺の親友の恋人だったんだ。本当に仲がいい二人で、大学でも有名な二人だった。

……それでも、心変わりっていうのは誰にでもあるんだよな。親友には他に好きな女ができて、美香を捨ててその女と付き合うようになった。

それが耐えられなかったんだろうけど、美香は自殺未遂を起こした」

「え……」

「恋人にかなり依存していたから、いきなり一人になっておかしくなってしまったんだ。
結婚するつもりでつきあっていたし、恋人と別れる日がくるなんて思ってもみなかったって……今では落ち着いて話せるけど……」

当時を思い出しているんだろう、司の表情は硬くて、言葉の最後は震えていた。

彼女、美香さんが経験した過去は私にも衝撃的だし、予想もしなかったことを聞かされて、私には何も言えない。

「美香と……あいつが付き合ってる時、本当に仲が良くて羨ましかった」

「ん……」

それまで私の膝に置かれていた司の手が、そっと動いた。

手の平を上に向けて、重ねていた私の手を握る。

司の手は私の指をからめながら、そしてぐっと力が入って。
それは彼自身の気持ちを私に落とし込むような仕草。

切なくて胸が痛い。




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