女王様のため息
ぐっと低くなった司の声が、私の心全てを捕えた。

ゆっくり伸ばされた指先は、私の頬を撫でているけれど、震えすらダイレクトに伝わるその仕草に私の体はぞくっと電気が流れるようだ。

思いつめたようでいて、どこか軽くなった司のその表情からは、

『真珠は、どうしたい?』

と私にボールが投げられたと教えてくれる。

司が今話してくれた事が本当ならば、私は自分の気持ちを無理矢理押さえつけなくていいって事なんだろうかと、そして、司と交わしたあのキスに、罪悪感を感じなくてもいいのかもしれないと、自分の想いを肯定する感情に甘えてしまいそうになる。

「今、ちょっと、びっくりして……。私、あの、その。
司の事を好きだけど……やっぱり、気になるっていうか」

すんなりと司が自分のもとに来てくれるとは思えないせいか、どこか小さくなる声。

「気になるって、何が?」

司の顔が近づいて、その声の最後に残る吐息すら感じる。

ダメになりそうなくらい、一気に体が熱くなる。

「真珠の不安も気になる事も、全部言ってくれ。それで真珠が側にいてくれるなら、全部クリアにしてやるから」

視線を上げると、すぐそこに司の顔があって、私を射抜くようにその瞳が私を包んで逃がしてくれない。

ほんの少しも揺らす事ができない私の瞳。

瞬きすらためらう甘い時間は、いつまで続くんだろうと、そして、このまま続いて欲しいような、そうでないような。

そんな事を、ふと思って小さく息を吐いた。







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