女王様のため息
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今年入社した新人達が、社内で一番広い会議室で整然と講義を受けている様子に驚いた。
まっすぐに背を伸ばして、視線は講義をしている檀上の社員に向けられている。
頭を揺らす事もなく、時折手元のノートに講義内容を書き留めたり、区切りのいい所で資料に目を通したり。
誰一人として私語をかわす事もなくて、『真面目で一生懸命』という表現がしっくりくるような、そんな状況に言葉を失ってしまった。
……この状態が当たり前なんだけど。
そう、新人だもん、みんな緊張しているのが当然だし、各部署の代表の人たちがそれぞれの部署の業務内容や特徴を話しているんだから、必死で聞くのは当たり前だ。
去年のように、私語全開、建築関係の部署以外の話には全く興味を示さずに居眠りまでするような状況がおかしいんだ。
今、目の前のこの状態が、自然なんだよ。
もう少しで私が講義する順番が回ってくるけれど、この様子なら、今年は私も気持ちを穏やかに保ったままで講義を終える事ができそう。
ちょっと、ほっとした。
小さく安堵の息を吐いて、何とはなしに、視線を動かすと、近くの席で講義を受けている男の子と目が合った。
……ん?
どこかで、見覚えがあるような、ないような。
会った記憶ははっきりとはないけれど、その顔には見覚えがある。
その新人の男の子から視線を離せずにいると、その男の子はにやりと笑ってみせた。
……は?にやり?