5つの飴玉の秘密
序章
 甘く、とろける様に甘く――それはきっと恋の味だと、いつか誰かが言っていた。

いや、誰もそんな事など言ってはいない。俺の恋に対する理想が、先入観となって頭に植え付けられたのだろう。

けれど、俺ももう今年でハタチだ。それなりに恋愛を経験し、恋の酸いも甘いも体感してきた。
そんな俺にとって、恋がとろける様に甘いだなんてのは、所詮、幻想であり妄想でしかないんだと、重々自負している。


 ――まぁ、そんな事はどうでも良い。……いいや、やっぱり良くないかもしれない。

‘恋の味’なんてのは、人間が己の感情に付けた、要は後付けの様なモノで、そんなモノは存在もしなければ、味覚なんてもってのほかだ。


 ――じゃあ一体これは何の味がするんだ?


 そう思ったのが間違いだったのかもしれない。まさか、こんな事になるなんて……。

俺は――俺は、一体どこで間違ったのだろう?

あの時の俺には不満や不安など無く、自由奔放に、そう、人生を謳歌していたんだ。
なのに何故だ? なんであんな事が起こったんだ?

 始まりは確か……今から約半年前――空は雲に覆われ、街全体が薄暗く寂しい、そんな日だった……。
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