小さな宝物
『でもよ~その木村ってヤツほんとにいんの?』


お兄ちゃんはコーヒーを飲みながら言う。


電車での出来事は家族みんな知ってるんだ!あの日、帰って速効喋っちゃった!


『ほぇ?なんで?いるよ~!』


あたしは不思議な顔でお兄ちゃんを見ながら言う。


『だってさ!あおいが助けてもらったの去年ぢゃん?』


『そぉだけど…?』


『卒業してる可能性だってあるぢゃん』


……え………?


『はぁ~?あおいそんな事くらいピンとこいよ』


お兄ちゃんは固まったあたしに呆れたように言う。


そうだ…


そうだよっ!


あの時3年生だったら確実に卒業してんぢゃん!


あたしってバカ…


あたしってアホ…


なんてこと!?


もぉ逢えない…?


パンを食べる手が止まり、深刻な顔して黙ってるあたしに、お兄ちゃんは更に追い討ちをたてる。


『あおい頑張った意味ねぇぢゃん』


グサッ


お兄ちゃん痛いです。


しまった!?


あたし何にも考えてなかった!


今日からルンルンなはずだったのに…


桜散るの速過ぎ!


『最悪ぅ…』


やっとの思いで出た言葉。


『なんだよ~ホントの事ぢゃん?』


お兄ちゃんはそんなあたしを見ながら朝食を食べてる。


こんな始まりであたしの高校生活って大丈夫?


『でも卒業してない可能性だってあるでしょ?まだ諦めちゃダメよ!』


台所で食器を洗いながらお母さんが言う。


そうだよね!


まだ決まったわけぢゃない!


うん!元気出た!


『お母さんありがとぉ!さすがお兄ちゃんより生きてるだけある!元気出たよ~!んぢゃ行って来ます♪』


あたしは元気よく家を出た。


あたしってば単純。


< 11 / 31 >

この作品をシェア

pagetop