小さな宝物
『生徒会長だけ…』
あたしは頭の中で何回も先生の言葉をリピートさせた。
『きゃ~!あおいっ!!やっぱ会長しかいないんだよぉ!!』
ちづるは職員室前にもかかわらず喜びの悲鳴をあげる。
『こら~!!大谷!』
弘君はちづるを叱る。
あたしはそんな光景をただ見てた。
状況がつかめない…
うん。
だから…
要するに…
『運命の人は会長だったわけ!』
何も言葉が浮かばないあたしに、ちづるは答えをくれた。
『!!』
あたしはなんだか急に恥ずかしくなって顔をかくす。
だって…
だってね!
会長がコッチに来るの!!
『こんにちは。一年生?』
会長は笑顔であたし達に話しかける。
『…はい!』
ちづるは緊張した様子で返事をした。
あたしは…
何も言えなかった…
というか、口が開かなかった…
『田中先生。親睦会についてちょっと…』
会長は弘君を連れて職員室に入る。
弘君はあたし達にごめんねってウインクして合図して行った。
『ちょっと!あおい!大丈夫?』
ちづるはあたしの顔を除き込み反応を確かめる。
『…くるしい!』
やっと出たあたしの言葉。
『はぁ?』
きっとちづるは意味がわからなかっただろぉ。
あたし…
息するの忘れてた。
息するの忘れるくらいドキドキした。
だっていきなり現われるんだもん!
心の準備なんて全然できてなかった。
初めて会長が話しかけてくれた…
なのに…あたし返事できなかった。
変に思われなかったかな?
たった短い一言だったけど会長の声はあたしの頭に響いた。
やっぱり…
素敵な人!
あの時助けてくれた人は会長だった!
それがわかっただけでこんなに嬉しいなんて…
あたし…
会長に恋しちゃったのかな?