小さな宝物
『あおい…いくよっ!』


ちづるは心臓バクバクのあたしの手を引く。


『ちょっ…まっ…』


あたしはちづるに引っ張られながら生徒会室に入る。


すると…


『ぷっ…ははっ!そんな緊張すんなよ~!まだ木村いねぇから』


広い生徒会室の中では、弘君がソファに座ってお腹抱えて笑ってる。


『なぁんだ!弘君性格悪いなぁ~』


ちづるは弘君の向かいのソファに倒れ込むように座った。


『もぉ~!!弘君最低!!信じらんない!』


あたしは真っ赤になりながらちづるの横に座って叫ぶ。


信じらんない!


あたし、この短時間ですっごいドキドキしたのに!!


『なんかすごい疲れた…もぉ弘君嫌いぃ』


あたしはソファにうなだれながら弘君をにらみ付けた。


『ははっ!悪い。お前わかりやすいって!面白いヤツだな~』


さっきから弘君は全然笑いが止まらないみたい。


全然笑えないし。


ムカつく。


『あおいで遊ぶのやめてよ!この子繊細なんだから』


ちづるがフォローしてくれるけど…やっぱムカつく。


『ひどい…ムカつく。』


あたしは呪文のようにブツブツ繰り返す。


『ほら~弘君ちゃんと謝らないと!あおいは引きずるんだから』


ちづるもあたしを横目に笑ってるし。


『2人とも嫌い』


あたしはちづると弘君をにらみ付けてやったんだ。


『そんな怒るなって~!塩谷はアレだろ?木村が好きなんだろ?』


弘君はニコニコしながら言う。


『違うし!弘君の勘違いだよ!?』


あたしは顔を真っ赤にしながら、慌てて口を尖らせて否定した。


『ははっ!わかったって~塩谷素直だ』


弘君はあたしの頭をヨシヨシしながら言う。


『もぉ~!!違うもん!弘君のバカ!!』


あたしが必死に誤魔化そうとすればするほどバレてるみたい。


こんな自分が嫌だ…


もっと平然としてたいのに。


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