小さな宝物
『ぢゃ俺も会議だから行くな!』
そう言うと弘君は生徒会室を出て行く。
『まだ入るって決まったわけぢゃないんだよ~!』
ちづるは弘君の背中に叫んだ。
『あっ!塩谷』
弘君は何かを思い出したように振り返りあたしの名前を呼んだ。
あたしは弘君の顔を見て首をかしげる。
『木村って彼女いないから』
『なっ…!?』
弘君はそれだけ言うと早歩きで逃げて行った。
『だから違うってばぁ~!』
あたしは真っ赤になって、その見えなくなった背中に叫んだ。
なんか弘君て子どもみたい。
あたしの気持ちがいちいちバレててやりにくい。
でも…
弘君のおかげで会長と話せたんだし?
生徒会に入るとは言わないけど…考えるだけ考えてみよっかな。
『弘君のおかげで会長と話せたんだし…考えるだけ考えてみよっか?』
ちづるもあたしと同じ事思ってたみたい。
『そだね』
あたしはちづるに笑顔でうなずいた。
誰もいない生徒会室…
あたし今日初めて会長と喋ったんだ…
会長のイメージはあたしの妄想の中のイメージとちっとも変わらなかったんだ。
生徒会室はすごく日当たりがよくて、そのままソファで寝れそうなくらいポカポカしてた。
あたし達はそんな生徒会室を後にした。