小さな宝物
『んぢゃあさっ!タオル渡してくれた人なわけだ~!』


ちづるは1人楽しそうに話す。


『まだわかんないけど…多分そぉかな?』


まぁ考えたらそれしかないよね。


『その人かっこよかった?身長は?どんな人?』


ちづるは恋多き乙女だからキラキラ目を輝かせて聞いてくる。


『え~!気持ち悪くてそれどころぢゃなかったよ。顔すら見てないし。』


あたしが困ったように言うとちづるは…


『ぢゃあ、この木村って人探そうよ!』


と面白そうに言う。


『やだよ…絶対あたしの事なんて覚えてないし。高校生って怖いもん。』


『なぁに言ってんの!?運命の出会いかもよ!いいなぁ~あおい!絶対イケメンで性格もバッチリだよ~!』


ちづるは名札を見ながら妄想を繰り広げてる。


『ほら~お前ら、授業始めるぞ!大谷!席につけ!』


いつの間にか担任が入って来ててウチらを注意する。


『はぁい。』


そぉ言うとちづるは、恥ずかしそうにイスを持って自分の席に帰っていった。


『数学か…』

一時間目の教科書を出しながら呟く。窓の外は太陽が眩しく笑ってる。


みんなそれぞれ自分の進路を決めて、頑張ってる。



そぉ。あたしは受験生。


来年からは憧れの高校生だ。


あたしは将来の夢もなければ、行きたい高校もない。


あたしの頭で入れる高校ならどこでもよかった。


今朝の出会いがあるまでは…


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