桜空あかねの裏事情
笑顔で応える結祈は、朝食の準備に取り掛かる。
それは朔姫が黎明館に来てから、変わらず見る光景。
ここの家事全般は、全て結祈が取り仕切ってるのではないかと思う。
自分より四歳年上である事は紹介された時に知っているが、それでも見た目は自身と差ほど変わらない少年。
そうなると何故だか自分が情けなくなりそうになる朔姫だが、家事などした事がないので手伝う事など到底出来ない。
「そう言えば」
卵をフライパンに落とし、調理をし始めた結祈が声を漏らす。
「朔姫は、あかね様をどう思いますか?」
「桜空さんの事?」
不意に解散の危機にあるオルディネの、新たな事態の渦中にいる同年の少女の名前が出て口を噤む。
「昨日会ったばかりだから、よく分からない」
「そうですか」
「結祈はどう思うの?」
「明るくてお優しい方です」
朔姫は目を瞬かせ少し見開く。
即答だった事もそうだが、何より見たこともない嬉しそうな笑顔で答えたからだった。
「少し強引なところはありますが、許容範囲内ですし。それに何と言っても――」
「…………」
朔姫が聞き返したのを皮切れに、あかねについて語り始める結祈。
それを耳に入れながらも、昨日初めて会ったその少女を思い出す。
名字が印象的だったのは事実だが、実を言えば彼女が男子と仲良さそうに教室に入った時から知っていた。
.