桜空あかねの裏事情

緊張しているのか関心が無いのか、どこか境界線を引いて妙な静寂を保っていた教室の空間。
その空間を壊すように、友人であろう少年とやってきた彼女。
少年の方は既に教室にいて、浮き足立ったように入ったり出たりしてその存在は知っていたが、彼女が来た事が余程嬉しかったのだろう。
一人でいた時とは、まるで違う溌剌とした声が響いていた。
それだけ仲が良いのだろう。
また彼女はHRで気怠さを隠さず、まるで他人など関係ないかのように、名前と上辺だけの社交辞令の一言だけ言ってあっさりと終わっていた。
しかし彼女に続いて行われた少年の紹介の時だけは、少し笑っていた気がした。
他人に関心のない同年代と思えばそれまでだが、どうもそれだけとは思えない。
何故か彼女には話してもないのに奇妙な親近感があった。
学校が終わり黎明館に帰って再び会った時、その親近感が何の事かすぐ理解できたのだが。


「……悪い子じゃないと思う」


自分に笑顔で話し掛けてきた彼女に、悪い印象は無かった。
むしろ折角話し掛けてくれたのに会話は途切れ、朔姫は少しばかり後悔の念を抱いていたくらいだ。


「だけど――」


新たに仲間になる同年の少女としては、歓迎していた。
あの話を聞くまでは。


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