桜空あかねの裏事情

はっきりと答える結祈に肯定する事も否定する事も出来ないまま、朔姫の顔色は困惑に陰る。
例えリーデルになったからとは言え、彼女の本質までもが変わるわけではない事は、理解しているつもりだ。
しかし、それを受け入れられるかどうかはまた別の話なのである。


「強制するわけではありませんが、一度あかね様と話してみたらいかがでしょうか?」

「話?」

「あかね様の事を多少なりとも知る事が出来ると思いますし、加えて同年の女子と話せる良い機会かと」


過去の経験から朔姫は同年代の、特に女子が苦手だった。
そんな彼女からすれば、同年代のあかねと話すという事は、まさに難関に挑むようなものだった。


「でも、何を話たらいいか……」

「普通に話せばいいんですよ。例えば趣味の話や好きな物とか他愛の無い話を」

「……なるほど」

「ああ、女性ならではのファッションや恋のお話もいいかも知れませんよ」

「それは少し……ハードルが高いかも」


提示された様々な情報を参考に考えてはみるが、会話を継続させる話題はなかなか思い浮かばない。
考えている内に次第に百面相をし始める彼女を見て、結祈は苦笑する。


「そんなに構えなくてもいいと思いますが」


「でも、相手に不快な思いをさせるのは良くない」

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