桜空あかねの裏事情
他者との関係は、それぞれが互いに好感を持つ事によって、築くことが出来るものだと思っている。
だからどちらかに少しの嫌悪を抱いてしまえば、成せる事は出来ないと朔姫は考えていた。
「なら……挨拶だけでもいいかも知れません」
結祈は思案しながら新たな提案を出す。
「挨拶は基本です。無理に話して相手に悪い印象を与えるよりかは、好感は持てるかと」
「そんなものかしら?」
尋ねれば、結祈は笑顔で頷く。
「ええ。私は少なくとも嬉しいです。例え話ですが、仲良くなりたい相手がいたとします。ですがその方は他の方にしても、貴女に挨拶をしません。どう思いますか?」
「私なら、その人に避けられてるのか嫌われてるのかと思う」
自分が感じた事を素直に述べると、朔姫はハッとした表情になる。
「つまり挨拶が有るか無いかでも、印象は変わるという事ですね」
「……気付かなかった」
感心する朔姫に、更に言葉を続ける。
「嫌われてる人に好感を持たせる事は至難の業。ですが何もない状態からならば、いくらでもなるということです」
説得力があるのか、或いは心を許しているからなのか。
困った時、朔姫は結祈に相談する事が多い。
彼の言葉には温かみがあり、励まされるのと同時に感謝していた。
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