桜空あかねの裏事情
肯定するよりも疑問を投げるあかね。
兄が異能者に関して、どのような感情を抱いてるのか僅かに気になって、問いかけた言葉だった。
『んなことねぇよ。お前が嫌じゃなければ、それでいい』
「そっか」
『ああ………そうだな。異能者の事を知りたいなら、薊に聞いた方がいいんじゃないか?』
「薊兄?」
棗の口からもう一人の兄の名が出て、あかねは目を白黒させながら、その名を呟いた。
『異能者と関わりある仕事に就いてるからな』
「そうなんだ。でもよく知ってるね」
兄妹ながら兄の現状を、あかねは今初めて知った。
というのも次男・薊は、五年前に母親と大喧嘩し家を飛び出して以来、まったくの音信不通であったはずだ。
「少し前に新宿でな」
「へぇ。でも薊兄かぁ……元気にしてるの?」
『みたいだ。まぁ相変わらずの馬鹿だったがな。お前や楓の事をやけに気にかけてたぞ』
「え、そうなの?」
『ああ。後で番号送っておくから、掛けたらどうだ?仕事で出ないかも知れないが』
「うーん。そうしてみる」
あかねは嬉しそうに頷いた。
『ところで本はどうする?送るか?』
「あ、大丈夫。ゴールデンウイークに帰るから、その時で」
『了解。だがいいのか?』
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