桜空あかねの裏事情
「何が?……もしかしてあの子の事言ってるの?」
『……まぁな』
棗は間を空けて肯定する。
不器用ながらも彼なりに気遣っているのが分かった。
「帰るっても、一泊だから大丈夫じゃん?兄貴達はどうなの?」
『俺は別にどうと言う程、そんなにまだ接してねぇからな。まぁ葵はあからさまに毛嫌いしてやがる。嫌がらせが凄まじい。とは言え、楓や蓮とはうまくやれてるみてぇだから、とりあえずいいんじゃねぇの?』
「ふーん。なら私も善処する」
『そうか。無理するなよ』
「言われなくても、分かってるよ」
『お前な……』
その後、他愛のない話を数分してあかねは電話を切った。
そしてすぐに送られてきたもう一人の兄の携帯番号を登録し、すぐに電話を掛けたが、仕事中なのか出ることはなかった。
「ふぁ……お風呂入ろうかな」
眠気から重くなっている瞼を擦って、ふと視線を机に向けると朝とは違った光景である事に気付く。
「何?」
ベットから離れて机まで歩くと、数冊の本が積まれていた。
どれも初めて見るもので、厚さは様々だが、一冊手に取り頁を軽く捲れば、よく読む込まれている事に気付く。
その証拠に、ところどころ汚れがある。
「私のじゃないはずだけど」
結祈が置いたのだろうか。
そんな事を思いながら、積まれた本を順に手にとっていくと、間に挟まっていた一枚の紙が床に落ちる。
体を屈めて手に取れば、それにはこう書かれていた。
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