桜空あかねの裏事情

否定するとほぼ同時に、朔姫は既に隠し持っていたスローイングナイフを手に取り、一気に腕を振る。
空気を切り裂くような音と共に、ジョエル目掛けて閃光のように走る。

しかし動きを読まれていたのか、全てジョエルには届かず、彼の足元の床に突き刺さるだけだった。
それでも朔姫は間を置かず、蹴りとナイフで攻め立てる。
異能者の中でも、圧倒的な力を持つジョエルに一矢報いるには、体勢を崩して隙を作ること他にない。
だがどんなに攻めてもジョエルには通じない。

ならば、と。
朔姫は一端、距離を置いてナイフを両手に取り、ジョエルの足元すれすれを狙って投げる。
必然的にジョエルは避ける為に、後ろへ下がっていく。
持てる限りの力でナイフを放ち、攻め続けるとジョエルは壁際に追い詰められる。
そして遂にジョエルの背が壁に当たったのを、朔姫は見逃さなかった。


「ッ…」


ジョエルが息を呑むのど同時に、彼の足元が一瞬にして凍り付く。
朔姫はこれを狙っていたのだった。
壁際まで追い詰め、張り付けるように氷で足場を固めれば避ける事は出来ないと。
案の定、ジョエルの足場を固める氷は膝まで来ており、身動きが取れない。
その隙に朔姫は自身の周りに、雹を発生させる。


「これで決まり」


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