桜空あかねの裏事情
「なんだ佐々木か。オレ様の許可なく開けんなよ」
「元から開いてたし。それにここは香住の部屋だから。で、何やってんの?」
「何って下着見せてる」
「それは分かる。何でそうなったの?」
この光景は誰が見ても歪に感じるはずだ。
佐々木と呼ばれた少年と一条が問答を繰り返していると、昶が事情を説明しようと口を開く。
「一条のパンツがないんだってよ。それで疑われて、潔白を証明してる最中」
「ああ。なるほど」
納得したように頷く佐々木。
しかし何か閃いたのか、あっ。と声を漏らした。
「……聞いて思い出したけど、さっき下着の落とし物があるって先輩が言ってた」
「マジ!?」
「きっとそれじゃないの?」
「んじゃ行ってくるわ!」
一条は勢い良く立ち上がって、嵐のように去っていく。
そして始めから何もなかったように静寂だけが残された。
「ありがとな。佐々木」
「いつもの事だから」
そう言って優しく笑うのは佐々木と呼ばれた少年。
隣のクラスで同じく寮生で、一条に紹介され知り合った。
比較的大人しいが、自分をしっかり持っていて、何に対しても正反対の一条と仲が良かった。
「今日はバイト?」
「いや、今日はない」
というよりは、特に予定はないと言った方が正しい。
本来なら午後からバイトがあるはずだったが、急なシフト変更により突如、休みになった。
折角空いた休日なので、先程電話であかねを遊びに誘ったりもしたが、大切な用事があると言われ断られてしまった。
結局何もない休日になって、昶はやる気もなくベッドに寝っ転がっていたのだった。
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