桜空あかねの裏事情
「そうなんだ。これから一条達とお昼食べに行くんだけど、良かったらどう?」
「え?」
突然の誘いに小さく声を零しながら、佐々木を見上げた。
「いいのか?」
「もちろん。他のヤツも来るし、暇なら行こうよ」
笑顔で誘ってくる佐々木に、昶は内心戸惑いながらも、流されるように同じ笑顔で頷いた。
「良かった。じゃあ11時半に玄関に集合だから」
「分かった」
「また後でね」
佐々木が部屋から出るのを確認すると、昶はまたベッドの上に仰向けになる。
時計を見れば時間まであと一時間半もある。
どうしたものか。
置いてあった携帯を手にとってはみるものの、特に何もするわけではなく画面を見つめる。
「………はぁ」
それがバカらしくなって、再び携帯を投げるように、ベッドに置き捨てる。
「妙に不安なんだよな」
漏らした声は、誰かに聞かれるわけでも届くわけではない。
何故かここにいる自分が、何となく場違いな気がして仕方が無い。
自分は人であると同時に異能者だ。
恐らく寮生の中では、自分くらいしかいないだろう。
.