桜空あかねの裏事情

家族の元を離れ、ここに来てからというもの。
他者と居る時、その空間。
全てにおいて、酷く居心地の悪さと何とも言えない不安を常に感じていた。
あかねが隣にいる時を除いて。
あかねが傍にいる時は、何故かそんな居心地の悪さや不安なんてものを感じない。
むしろそれを上回る新しい何かが、圧倒している気がする。
それ反動か、彼女がいない時の昶は暗く酷く、そして臆病になっていた。
異能者だと知られれば、周りにいた者達は必ず自分から離れていく。
それを理解していたから、そうなってしまうのかも知れない。
そして異能者だと知っても、離れなかった彼女に縋りたくなるのかも知れない。

彼女と関わる事で、少しずつ変わりつつある日常。
もしかしたら、自分がここにいていいのだという理由を教えてくれるかも知れない。
例え彼女が自分をどんな風に思っていようと。


そんな希望と不安を抱えながら、昶は瞼を閉じたのだった。


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