桜空あかねの裏事情
「そうだよな」
昶が呟く。
「オレとお前はダチだ。ただそれだけでいい。今はそれに気付けたから、オレの悩みは些細な事だったんだ。ありがとう、あかね。それとごめんな。避けたりして」
そう言って優しくも穏やか笑顔を見せる昶に対して、あかねも笑顔で応えると、彼の頬を容赦なく抓った。
「いたたたたっ!あ、あかねひゃん、いたい!いたいれす!」
「当然でしょ。私、朝からずっと探してたんだから。どこぞいじけ虫さんが勝手に悩みこんで、隠れて出て来なかったのが悪い」
「いじけ虫って……みんな酷ぇ……いひゃい!いひゃい!!」
その後、数回のやりとりでようやく頬から手を離す。
昶は若干涙目になっていたが、気にしないことにした。
「いってぇー……流石はあかね。容赦ねぇな」
「やるときは徹底的に」
「だよな。んじゃ!オレらも行こうぜ!」
昶はいつもの元気さを取り戻したように、勢い良く立ち上がる。
「山川さんの手作りカレーがオレを待ってる…!」
「瀬々のかもよ?」
「うげぇ……夢壊すな」
「ごめんごめん。早く行こう」
あかねも立ち上がって昶と共に歩き出す。
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