桜空あかねの裏事情
黎明館 食堂
林間学校から帰還した翌日。
再び始まった黎明館での生活の最初である、爽やかでのんびりとした朝を館に住まう面々は迎えていた。
そんな中、朝には大変似つかわしくない重々しい声が聞こえた。
「お嬢さんは今日も呑気な事だな」
「あ、おはよ。ジョエル」
「おはよう。さて、そんなお嬢さんに質問だ。今日は何の日か分かるかな?」
「ゴールデンウイーク最初の休日じゃないの?あ、結祈。リンゴジュースある?」
「御座いますよ。ただいまお持ちします」
「ありがとー」
「あかねちゃん。目玉焼きに塩かける?」
「かける!」
「じゃあかけてあげるわ」
「ありがと!ギネヴィアさん!」
常日頃から発せられる皮肉と挑発的な言葉を差して気にすることもなく、あかねは平常心のまま話し続ける。
それに対し、自分と話しながらも周りとも会話をする彼女に、ジョエルは僅かに苛つきを覚える。
あくまで冷静さを欠くことはないが。
「どうやら、お嬢さんは昨日言った事を忘れているようだな。今日は――」
「葛城さんが来るんでしょ。確か11時に隣の客間だよね。昨日教えてくれたから知ってるよ」
有無を言わさぬような笑顔でそう言えば、出端を挫かれたようにジョエルは沈黙する。
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