桜空あかねの裏事情

「………。では改めて、もう一つ質問しよう」

「すっげー!結祈って洗濯だけじゃなく料理も出来るんだな!」

「はい。料理は幼い頃からやっておりましたから、好きなんです。お口に合えば良いのですが」

「いやいやいや!オレの姉ちゃんより美味いって!やっぱ男も料理が出来るようにならないとな!」

「何故、彼がいる?」


朝から元気の良い声を響かせる昶に対して、またも言葉を遮られたジョエルは心底、不快そうな顔をして見ている。
もちろん昶は黎明館には住んでいない。
と言うより、彼が黎明館に来たのはむしろこれが初めてである。


「昶がいちゃダメなの?」


さも不思議そうに尋ねると、ジョエルは呆れながら溜め息をついた。


「当然だ。彼は部外者だ。君もその辺りは、言われずとも自覚しろ」


はっきりとそう答えたジョエルに、あかねは何も言わず、ただ彼をじっと見つめる。
それに気付かないはずはなく、彼女の視線をサングラス越しに受け止めて口を開いた。


「何か言いたそうだな」


するとあかねは視線を逸らし、外方を向いて間を空けながら言葉は紡ぐ。


「……別に。ただ昶の事を調べたり、けしかけたりしといて、よくそんなこと言えるなぁって」

「ほう」


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