桜空あかねの裏事情

ジョエルはサングラス越しに目を細める。


「思ったより早くバレたか。道理で昨日から君の態度には棘があり、あからさまによそよそしかったわけか。存外、愛らしいな」


その言葉にあかねは思わず顔を歪ませる。
というより、引いているという方が正しいかも知れない。


「冗談キツいわ。ていうか私に何も言わないで昶の事調べてたのね」

「ああ。君に言ったら言ったでうるさそうだからな」

「む」

「フン。単純に興味だよ。彼の異能も君と同じく極めて稀有だ。そう何人もいないだろう」

「…ジョエルは珍しいものが好きなの?」

「未知なモノを知りたがるのは、人の性質そのものと思うが」

「んーまぁそうかもだけど」


御託が並びに並んで、真意を隠されているような気がしたが、とりあえず彼が昶に興味がある事だけは理解できた。


「簡単に言えば、ジョエルは昶に興味があるってことね」

「そういう事だ。それで?」

「ん?何?」

「彼がいる理由を、まだ聞いていないのだが」

「ああ、それはね……」


あかねは疑問に誘われるように、昨日の事を振り返り始める。


「昨日、林間から学校に帰ってきてからなんだけど―――」


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