桜空あかねの裏事情


「……って事なんだけど」


一部始終を話せば、ジョエルは心底、呆れたようにあかねを見下ろしていた。


「君が誘ったのか」

「うん!仲直り出来たし、なんか盛り上がりたかったんだよね」


そう言って、向かい席に座っている昶に視線を移す。
朔姫とは普段は変わりなく話しているが、結祈やギネヴィアとさえも、臆することなく楽しげに会話を交わしている。


「ハァ……君には呆れを通り越して感心する」

「それって褒めてるの?」

「…………」


途端に無言になるジョエルは、どうやら答える気がないとでも言わんばかりに、テーブルに置かれていたポットを手に取り、使われてない空のティーカップに紅茶を注ぎ飲み始める。


「……ふむ。今日は若干濃いな」

「大して変わらない気がするけど」

「ずぼらなお嬢さんには判るまい」


皮肉とも取れる発言をしながら、ジョエルは隣に座る。


「それで?」

「?」

「香住昶は、私に何の話があるんだ?」


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