桜空あかねの裏事情

「……ああ」

「どうだった?」

「どうも何も、見た目は写真よりはいい……まぁ万人受けと言ったところだが。しかし性格は母親似だったな。初対面の人間に変質者などと言うとは、失礼にも程がある」

「クスッ……果たしてそうかな。君の身なりじゃ、そう言われても仕方ない気がするけど」


むしろ全身黒ずくめの男が、不審者に見えない方がおかしい。
だが初対面の人間、特に妙な威圧感のあるジョエルに変質者と言い放つとは、鈍感なのか肝が据わっているのか大変興味深い。
アーネストは無意識に笑みを零す。


「会ってみたいものだね。その少女に」

「すぐ会える。暫く滞在するだろう」

「そうだね。見てから帰るのも悪くない」


アーネストがこのオルディネを訪ねてきたのは、別のチームに依頼された任務の為であり本来の目的とはズレている。
が、少しの寄り道ぐらいは構わないだろう。


「久しぶりに楽しめそうだ」

「フン……だそうだ。結祈」

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