桜空あかねの裏事情

昶の問いにあかねはふと考える素振りをしていた。
彼女は確か高校生になったばかりだと聞いたから、恐らく15、6歳だろう。
恋の一つくらいはあっても可笑しくはない。
かく言う俺も、彼女と同じ年頃には色々あったものだ。


「なぁなぁ!どうなんだよ?」

「ごめん、分かんないや。誰かを好きになったことないし」


恐らく期待していた答えとは全く違っていたのだろう。
誰が見ても分かるほど、つまらなそうに机に突っ伏した。
しかしその瞬時、何を思ったのか昶は顔を上げて不思議そうな表情をしながら口を開いた。


「なんか意外だな」

「そう?」

「おう。やっぱそのー……お前ん家ってそういうの厳しい系?」

「えーと……んー」


その問いにあかねは言葉を詰まらせる。
聞いた話だから定かではないが、異能者の始祖とされる古代種の血を受け継ぐ御三家の出身の者達は、血を濃く受け継いた優秀な異能者を後世に存続させる為、配偶者またはそれを前提に引き合わせる場合、大抵は親や親戚に勧められる謂わば政略結婚が多いらしい。
御三家の中で古い歴史をもつ桜空家出身の彼女も例外ではないだろう。


「多分そうかもね。蓮兄には許嫁がいるし、葵や楓にもそれっぽいのがいるみたいだから」

「マジか」

「御三家となると、やっぱりそういう事も難しいのね」


昶と朔姫はそれぞれ思い思いの感想を述べる。

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