桜空あかねの裏事情
ヴィオレット 店内
丁度連休と昼食の時間帯が重なり、普段より客が多いそこは、老人や子供連れ、カップルなどの姿があり、大変賑わっている。
「やぁ、あかねちゃん。また来てくれて嬉しいよ。このデザートはサービスね」
「わぁ!ありがとうございます!湊志さん」
そんなヴィオレットにジョエル達と共に訪れたあかねだが、何故か彼等が入っていった円卓の間へ行くことは許可されず、待機を命じられた。
だが特にする事もないので、共に来ていたアーネストと近くにあった席に座り、団欒と過ごしていた。
ジョエル達オルディネのその輪に入れぬ事に、やや疎外感と寂しさを感じたものの、隣に座るアーネストやオーナーである湊志と言葉を交わせば、そんなものは数秒しか意味を為さなかった。
そして何より。
「いんや〜、それにしてもあかねっちがヴィオレットの常連だったとはね」
「常連ってほどでも。それよりあかねっち?」
まるで始めからここにいたようにコーラを飲みながら、堂々と隣に居座る瀬々の姿があった。
「あだ名ッスよ。だって折角、友達になれたのに桜空さんなんて堅苦しいじゃないスか。俺っちそういうの苦手」
「はぁ……」
揚々と話し出す瀬々に、適当に相槌を打つ。
彼は思っていた以上に、人懐っこい性格のようだと思いながら。
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