桜空あかねの裏事情
「頼られるのは嫌いじゃないッスけど、対価以上の情報を明かすのは、ルール違反なんスよ」
『ああ。もちろん、対価はきちんとお支払いするよ』
「モノによるんスけど」
『モノによる、か。いくつかあるけれど、そうだね……君の先輩が取り扱ってる案件なんてどうかな』
「それ俺にメリットな――」
『本当にそうかな?上司が席を外している時に、偶然にも君が依頼主の相手をして、不幸にも機嫌を損ねてしまったよね。しかし君はその事を報告していない。お陰で先輩は依頼主の態度に困惑し、大分手こずっているようだけど』
「……何で知ってんスか」
『何故だろうね。一つ言えるとしたら、私もこう見えて情報屋の端くれだから……かな』
「つまり用意周到ってワケだ。流石は情報の才子。抜け目ないッスね」
『昔の話だよ。それに交渉を行う為の準備材料は、ある程度揃えておいて損はない』
「違いないッス」
『じゃあ受けてくれるね?』
「いいッスよ。と言っても、貴方が望む情報があるかは分かんないッスけど」
『知らない情報が一つでもあれば、気にしないさ』
「うわ、なんかプレッシャー。んじゃ話しますけど……あかねっちに話した時、例の生き残りさんは第五区に出没するって、俺言ったじゃないッスか」
『そうだね』
「あれ実は、出没じゃなくて潜伏してるんス。自分自身を守る為に」
『守る?』
「生き残りさん、未だに狙われてるらしいッスよ。かつて所属していたチームと一族を滅ぼした奴らに」
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